ダライ・ラマ法王庁、日本・東アジア連絡事務所代表。インド、ダラムサラ所在のチベット亡命政権(CTA)情報国際関係局(DIIR)長官、チベット政策研究所所長を経て、現在に至る。デリー大学上級仏教学研究科で博士号を取得。主な研究テーマはチベット及びアジア研究。
主な著書に、“Harnessing the Dragon`s Fume - challenging the Chinese
communis party's distorted Tibet
narratives”「チベットの反論:チベットの史実を歪曲する中国共産党に挑む」(DIIR
Publications)、“The Ancient Civilization of Tibet - studies in
myth, religion, and history of
Tibet”(『チベットの古代文明 ― チベットの神話・宗教・歴史に関する研究』)(Library
of Tibetan Works and Archives,
Dharamasala)、『チベット語と日本語・英会話の本』(Paljor
Publicatons)などがある。また、チベットと日本の民話を執筆、翻訳し、様々な雑誌やメディアにチベット関連の記事を寄稿している。
ツェワン・ギャルポ・アリヤ博士は、チベットとモンゴルの関係と、中国がチベットと南モンゴルの占領の正当性を主張するために、いかに歴史的事実と記録を歪曲しているかという点、また、1913年に両国間で締結された条約の重要性について講演し、論文を発表する予定です。
平野 聡教授(Dr. Hirano Satoshi)
東京大学大学院法学政治学研究科教授。1970年、横浜市生まれ。主な研究テーマは、中国のナショナリズムとマイノリティの対立、複雑な歴史と国際情勢のもとでの中国文明の変容とその近代化、近代中国の権威主義的秩序とその社会などである。
主な著書:
『清帝国とチベット問題-他民族統合の成立と瓦解』(名古屋大学出版会、2004年)、『興亡の世界史
大清帝国と中華の混迷』(講談社、2018年)、『「反日」中国の文明史』(筑摩書房、2014年)。
清末の近代化と主権の概念、チベット・モンゴルへの影響。
チベットやモンゴルにナショナリズムや自決の概念が強く存在することは間違いないだろう。しかし、これらの概念は、複雑に絡み合った近代の歴史と国際情勢の産物である。前近代では、民族性とともに仏教徒としての意識も重要であったかもしれないし、そのような状況下でチベット、モンゴル、清国との間には豊かな関係があった。この関係が近代の悲劇とともに変化したのはなぜか。
本報告は、清朝末期の国際情勢とその近代化、特に北京のエリートがチベット仏教に対する認識をどのように変えたかにその起源を求めるものである。
ペントック (Ms. Penthok)(チベット政策研究所)
インド、ダラムサラ所在のチベット亡命政権(CTA)チベット政策研究所(TPI)リサーチフェロー。チベットのシガツェで小学校を卒業後、中国の廈門大学で社会学の学士号を取得。インドに亡命し、ラジオ局「Voice of Tibet」の中国語課に5年間勤務。2019年、チベット政策研究所に中国語研究員として入所。チベットに関する中国語のニュースをモニターしている。
研究テーマは、中国の宗教(チベット仏教)政策、愛国教育キャンペーン、指導部、中国の同化政策など。研究論文に「中国の中国化政策」、‘Bod kyii nang bstan krung go can du bsgyur ba`i srid byus’、‘Tibetan Languages Threating National Security? How Xi Jin-Ping Annihilates Ethnic Minorities’(「チベット語は国家安全保障を脅かすか?習近平はいかにして少数民族を殲滅するのか」)、‘An Analysis on the China`s Annual conference and the Minority issues’(「中国の年次大会と少数民族問題に関する分析」)がある。
ペントック氏は中国統治下のチベットやモンゴルの状況と、今後の道のりについて講演する予定です。
アルチャ(Govrud Archa)
神戸大学教養教育院非常勤講師。神戸大学国際文化学研究推進インスティテュート研究員。主な研究は内モンゴルの文化大革命、現代中国の政治と社会、マイノリティの権利など。
1981年、内モンゴルジリム盟生まれ、2005年に来日。2007年から南モンゴルの人権活動に参加し、現在南モンゴルクリルタイ幹事長を務める。
「内モンゴルの基層社会における文化大革命:民族と階級の交差」題目の論文で博士号取得。「文化大革命期の内モンゴルにおける被害状況に関する考察」(2023)、「文化大革命中の内モンゴルにおける「被害」に関する一考察 ―トゥメド左旗元農牧局万家溝果樹園の事例から」(2019)等論文の他、内モンゴルの文化大革命に関する一次資料の編集など。現在、「内モンゴルの文化大革命における階級闘争と民族問題」、「20世紀前半期における南モンゴル地域の社会変動に関する研究」等のプロジェクトを立ち上げ、研究を進めている。
アルチャ氏は、南モンゴルにおける言語と環境、人権等の状況を文化大革命期と比較しながら、その現状について報告を行う予定。
宮脇淳子(DR. JUNKO MIYAWAKI)
公益財団法人東洋文庫研究員、昭和12年学会会長。
著書:
『モンゴルの歴史 遊牧民の誕生からモンゴル国まで』、『最後の遊牧帝国 ジューンガル部の興亡』、『モンゴル力士はなぜ嫌われるのか』、『世界史のなかの蒙古襲来』、『満洲国から見た近現代史の真実』、『日本人が教えたい新しい世界史』、『真実の中国史[1840-1949]』、『真実の満洲史[1894-1956]』、『中国・韓国の正体』、『世界史のなかの満洲帝国と日本』など多数。
演題:「モンゴルとチベットの長くて深い関係」
モンゴルとチベットの関係は800年近い歴史がある。遊牧民のうちチベット仏教徒になったのがモンゴル民族なのである。モンゴルもチベットも満洲人の建てた清朝の支配下に入ったが、20世紀まで漢字を使うことはなく、チベットに赴任した満洲大臣はモンゴル人仏教徒で、政府やチベット人とモンゴル文でやり取りをした。1912年に清朝が崩壊したあと、漢人の中華民国とは何ら歴史的縁故はないと宣言したのは当然である。
ボヤント(Buyant)
ボヤント(宝音図)、内モンゴル出身。2001年4月に来日留学。法学博士、桐蔭横浜大法学部非常勤講師。政治制度比較論、中国現代政治、南モンゴル現代社会と政治の専門。
著作『内モンゴルから見た中国現代史――ホルチン左翼後旗の「民族自治」』、諸論文、ノンフィクション文集など。
発表テーマ:「現代南モンゴルにおけるチベット仏教の変遷 ―内モンゴル自治区東部地域を事例として―」
黄曼廷(Manting Huang)
華人民主書院協会幹事長。東州大学で人権修士号を取得し、柯建明立法委員の国会事務室助手、民進党中央党委員会青少年育成部政務副部長、部長を歴任。華人民主書院協会台北事務所所属。
発表テーマ:モンゴルと漢族の現代統治―中華民国の南モンゴル政策の分析
論文概要
- 中華民国政府のモンゴル政策とチベット政策の展開
- 中華民国政府の現在のモンゴルとチベットの予算と政策
- 中華民国政府のモンゴルとチベットの政策変更の分析
- 憲法制度と多民族集団
- モンゴル・チベットのジレンマと台湾問題
曽建元(Jianyuan Zeng)プロフィール
台湾客家人、東州大学法学部比較法部法学士、国立政治大学人民三原則研究所法学修士、国立台湾大学国家開発研究所法学博士。
前職: 中華大学行政管理学部准教授、国立台湾大学国家開発研究所客家研究センター非常勤准教授兼副所長、行政院推進委員会司法違法移行期の正義グループ研究員
現職: 国立中央大学客家語社会科学部および淡江大学情報コミュニケーション学部非常勤准教授、華人民主書院協会及び人民監視会議連合会長。台北市政府市顧問。
発表テーマ:チベット亡命政府の現状とチベット問題の展開の可能性
2023年5月、G7諸国は日本の広島で首脳会議を開催し、その中で共同コミュニケを発表し、チベット、新疆およびその他の統治下の地域における中華人民共和国による人権侵害に懸念を表明した。すべての当事者が引き続き注意を払うと述べた。 2023年の中国チベット発展フォーラムで、中華人民共和国の習近平国家主席は祝辞を述べ、「団結し、繁栄し、文明的で、調和のとれた美しい新しい社会主義現代化チベットの建設に尽力し、人民が安心して暮らせるよう努力したい」と述べた。その前に、中国共産党は、チベット自治区人民代表大会常務委員会の元副主任である紀国剛氏を、チベット統治に関する党の戦略に重大な違反を犯したとして非難した。新しい時代とその発展理念を無視し、法律と規律に違反したとして党から追放された。
本稿は、チベット亡命政府中央チベット政権の現状と情勢、チベット問題に対する現在の国際社会の見解、中華人民共和国のチベット統治政策の今後の展開動向、チベット問題に関する中央チベット政権の戦略 チベットにおける自由運動の経験と、それが南モンゴルにおける自由運動の参考としてどのように活用できるかについて議論を展開する。